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どうしようもない想いを抱えたまま、2年が経とうとしていた。
新体制の部活は練習や試合の日々で、あの日の記憶も薄まりつつあった。
ジリジリと肌を焼く日差しの下、45分のゲームを終え汗を流す。
「部長、瀧先輩、ドリンクです。」
「サンキュ、井上。」
「井上、ありがとな。」
高校でも部長をやっている圭に続く形で井上からドリンクを受け取る。
中学校ではテニス部だった井上は、高校でサッカー部に入った。初心者ではあるものの元々の運動能力が高いのか、新入生の中でも期待株である。こういった雑用も黙々とこなすのは中学の時から変わらない。
(…今でも白川さんと付き合ってんのかな。)
そんな俺の言葉が聞こえたのか、タイミングよく井上がこちらを見た。
「あの、瀧先輩に前から言おうと思ってたんですけど、」
「…?なんだ?」
隣の圭がニヤニヤしているのが、視界の端に映った。もしかして圭は知ってるのか?
「俺、前から付き合ってる人がいて…瀧先輩もよく知ってる人なんですけど…。」
「…あぁ、」
動揺を押し込むのにコンマ5秒。
「その人が今度の試合に来るらしくて…伝えとこうかと。」
ズキン
(そうか…まだ続いてたんだな。)
3年生が引退して初めての練習試合である。
注目されている井上もベンチ入りしていたはずだ、その応援は少し羨ましい。
「…そうか、」
ピーッと休憩の合図が鳴る。
あまり続けたくない話だったので、少しホッとする。
そこから次の試合まで、井上が話の続きをすることはなかった。
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