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3
フィレーンはステラを客室で休むよう促した後、大臣とセシリオとゴードンを王の間に戻る様に他の家臣に指示を出し、玉座に座って考え事をしていた。
ステラに、一緒になってもらいたいって言ったものの・・・それは私の本心だけど、確かにリーディの立場などを考えると色々問題が浮上する。ただそれを払拭できる方法が無いわけでは無い。その方法は私の一存で決められるものでもないし。大臣、セシリオ、ゴードンの意見も仰がなければならない。
にしてもセシリオは、リーディに何を告げたのだろうか?
彼もステラのことはきっと反対だと思う・・・。
と、ここまで思考を巡らせていた時、
「王女、レオノラの様子は確認した。」
ゾリアが戻ってきたのだ。
「ありがとう。」
「魔導師控室にいて、ちょっと具合が悪そうだったから休んでおけと言っておいたが・・・」
ゾリアの顔が険しい。
「どうしたの?」
「気のせいだといいのだが、様子がおかしいんだ。」
フィレーンが戸惑うや否や、一人の家臣がやってきた。
「王女・・・大臣の姿が見当たりません。」
「え?」
「王女!」
続け様、セシリオが息を切らせて王の間に戻ってきた。
「あ・・セシリオ・・どうしたのそんなに急いで・・・リーディは?」
「話を少しした後、王子も洞窟攻略の後でかなり疲弊をしていて自室で休むとおっしゃったので・・・」
「そうよね・・・」
「その後、妙な違和感を感じて北の石碑に赴いたのですが・・・破壊されていたのです。」
「!」
・・・石碑は・・・城を守る結界の一部分だ。それが破られたってことは・・・。
「ゴードンは・・・ゴードンは無事なの・・・?」
フィレーンは冷や汗を掻きながら、顔を真っ青にさせた。
―そういえばゴードンを探しに行った家臣だけが戻ってこない。
フィレーン、そのほかの者々皆、城内に何者かが侵入したのを確信したのだ・・・。何者なのかは・・・この城に4年前にも住んでいたものなら見当のつくものであり、再びあの時の惨劇が蘇る・・・。
☆
背負っていた槍を降ろされて、そっとベッドに横たえさせられる。
ステラはまだ困惑していた。
首筋を触れる手は優しく、でもどうすればいいのかわからない・・・。
自分を見つめる目をじっと見つめ返すことはできなくてつい、逸らした。
しかし、それに構わずに彼はキスをする。
耳に首筋に唇に。
そして彼の舌が、口腔内に忍び込んできてステラは驚いて反射的に抵抗しようとしてしまったが、身体が痺れる感覚と共に力が抜けていた両手をいつの間にかに押さえられてしまった。
深い口づけの後、一度唇を離して、リーディは言った。
「・・・ごめん、抑え効かなくて。」
「・・・・・・リーディ。」
「本心としては、このまま・・・」
ステラはその先を遮るように言った。
「私こそごめん・・・まだ気持ちが付いてゆかなくて。・・・その・・・」
彼女にとっては何もかも初めてで。
嫌ではないけれど、色々な思惑が駆け巡る。
それにすぐに気が付いて、リーディはステラの手首を掴んでいた手を離して、そっとステラを抱き寄せてベッドの上に横になった。
「いや、俺こそ。急過ぎたよな・・・。それ以上はしないからしばらくこういさせてくれないか?」
リーディは愛しい彼女の身体の感触に、理性を保つのがやっとの反面、でも触れてたいという矛盾した欲求に苦笑しつつも、ステラを抱きしめたまま眠りに落ちた。疲労の方が上回っていたらしい。
―そうだった・・・リーディは洞窟から帰ってきたばかりで・・・。
ステラは胸をなでおろし、その温かい腕の中で微睡んだ。
―今すごく幸せで、このまま時が止まってほしい・・・。けれど、
私、あの人に抱かれていたの。
再び彼女の言葉が思い出される。
―レオノラさんにも、この先のこともしたと
思うと、やっぱり辛い・・・。
心が揺れるのを感じつつも、ステラはまわされた腕に安心したかのように寝息をたてはじめた。
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