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キャロルは長老から力を授かると、深々と礼をした。
「そろそろ、そなたは戻った方が良い、そして忘れずにこれを・・・。」
長老の横に控えていた別の妖精が、袋一杯の何かを持ってきてキャロルに渡した。
「これは・・・!」
袋の中身は、薄水色に輝く薬瓶に入った飲み薬のようなモノがたくさん入っている。
「約束通りの滋養薬じゃ。ヴィーニーの分と、そなたらの分じゃ。特にマレフィックの勇者殿が魔力の放出で命を縮めるのを抑える働きがあるのでできる限り持たせたぞ?もちろんほかの仲間たちの体力魔力の回復にもよく効く。」
「ありがとうございます・・・。」
「キャロル、そなたは仲間たちの護りの要じゃ。しっかり皆を護ってゆくのじゃよ?
どうやら早く戻った方がいい・・・あちらの方が時間の流れは早く、何かが起きている気がするのじゃ。」
長老は険しい面持ちで頷いた。
「急ぎましょう、キャロル」
エメラインが厳かに言い、
「僕たちも結界のギリギリまで送るよ。」
ボギーとレーシィも力強く言った。
そして、長老の屋敷を出ると驚いた光景が・・・さまざまな翅を持つ妖精たちが
空を舞い・・・キャロルたちを見送っていたのだ・・・。
「長老様にお目通りが叶ったから、みんな安心して出てきたんだよ」
「これからいつでも、キャロルが居ればここに来れるからね。」
ポギーとレーシィは、ピンク色の靄の前まで付き添うとそう言った。
「何かあったら、また島の湖を訪れなさいね・・・。キャロル・・・。尊い勇者殿と
その希望の欠片の仲間の方たちによろしく・・・。」
エメラインもにこやかに手を振る。
キャロルは会釈をすると、明るく答えた。
「ええ!きっとまた、そちらへ伺うわ・・・!!」
靄の中に入って、一瞬気を失いかけたが・・・。キャロルは元の湖に戻ってきた。
湖は妖精の村へ出かける前とさほど変わらず
さざ波を打っていた。
―リーディも長老も時間の流れがちがう・・・って、言っていたけど。実質妖精の国にいたのは丸一日くらいだわ。どのくらいこちらの世界では時がたったのだろうか…。
キャロルはおもむろにナナイロマキガイを出した。
―まずこちらに戻ったら老師に連絡を取ってみてとリーディは言っていたわよね?
キャロルはゴードンに向かって念ずるように光るマキガイを持って祈りだした。
☆
城の南に位置する石碑の前で一人の老師と若い家臣が倒れていた。老師の懐にはうっすら何やら光っている…。倒れているその姿を見て、ひとりの中年の男がニヤリと笑い、王の間へ向かって歩き出した。
幸いにも彼は、老師の懐の中の光までは気が付かなかったようである…。
その男の背後には一人の魔性・魔王の第2皇子・ディーダがいた。
「・・・我が纏めて、虫ケラ勇者共々消そう‥。」
そう呟くと王の間へゆっくりと向かった。
銀の髪を靡かせながら。
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