3.睦月【千景】

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 そうして、訝しげに問い返す貫井に薄く微笑んでみせてから、千景はおもむろに制服のブレザーを脱ぎ捨てる。そのまま、今度はワイシャツのボタンに指を掛けつつ、もう片方の手でおのれの行動に驚いたように息を呑む貫井の手をその胸元に導くと、祈りにも似た思いで最後の願いを口にした。 「一度だけでいいんです。──俺のこと、恋人として抱いてください」
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