885人が本棚に入れています
本棚に追加
「木之瀬、なに?」
「え?」
「名前。
もう聞いちゃったもんは忘れられねぇし。
あきらめて答えろよ」
ウィーン…、と後ろでエレベーターの機械音が鳴っている。
階は、8,9と少しずつ増えていく。
「……、あの、名前は普通自分から…」
「あーーお嬢様、お嬢様。
礼儀ばっかでめんどくせぇなー。
龍崎尚。
これで満足かよ」
「龍崎、さん……」
「うわ、きもちわりっ。
うすら寒くなるわ」
「じゃあ、なんていえばいいんですか」
「尚でいい」
「尚さん」
「いや、きもちわるっ。
さん、いらねぇよ!」
「無理です。
知らない人だし」
「……」
尚は自分の両肩を抱えて、げんなりした目でひよりを見ると、どこかあきらめたようにため息をついた。
「で、名前は、お前の」
最初のコメントを投稿しよう!