1st-trap:縁は異なもの味なもの

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「木之瀬、なに?」 「え?」 「名前。 もう聞いちゃったもんは忘れられねぇし。 あきらめて答えろよ」 ウィーン…、と後ろでエレベーターの機械音が鳴っている。 階は、8,9と少しずつ増えていく。 「……、あの、名前は普通自分から…」 「あーーお嬢様、お嬢様。 礼儀ばっかでめんどくせぇなー。 龍崎(りゅうざき)(なお)。 これで満足かよ」 「龍崎、さん……」 「うわ、きもちわりっ。 うすら寒くなるわ」 「じゃあ、なんていえばいいんですか」 「尚でいい」 「尚さん」 「いや、きもちわるっ。 さん、いらねぇよ!」 「無理です。 知らない人だし」 「……」 尚は自分の両肩を抱えて、げんなりした目でひよりを見ると、どこかあきらめたようにため息をついた。 「で、名前は、お前の」
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