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「ひよりお嬢様、準備が整いましたので、ご案内いたします」
「ありがとう」
オートロック完備の高級マンション。
いくつかの段ボールはまだ置かれているものの、ほとんど片付いた部屋。
黒塗りの高級車から飛び出して見えた世界は、銀色だった。
「うわぁ、思ってたよりずっと広い!
ここに住んでいいの?牧」
ひよりは、南から入り込む日差しに照らされた部屋の中を見て歓声をあげる。
夢みたいだ。
私、一生あのお屋敷から出れないと思ってた!
こんなことあるんだ!
初めて外の世界を知った小鳥のように目を輝かせるひよりに、執事の牧淳也は苦笑した。
「えぇ、この一年。
どうぞ、ご自由にお使いいただいて構いませんよ。
一週間に二回、私が訪問させていただきますが」
「牧だけ?」
「はい。
お嬢様の部屋の様子や生存確認などを行わなければなりませんので」
「生存確認…。
でもいいや、牧なら」
無防備に笑うひよりに牧もつられて微笑む。
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