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エレベーターにかけた値段一体いくらなんだ、と思いながら内装をじっくり値踏みしていると、チーンと軽い音がしてエレベーターが20階に止まる。
そのまま音もたてずにゆっくりと開くドアから抜けて、尚は迷いなく2015室のインターホンに手をかけた。
そのまま躊躇なく、そこを連打する。
しばらく連打を続けていると、
「うるさい」
と不機嫌そうな声が聞こえてきて、ドアが開いた。
そこから覗く顔はしかめ面だ。
「おー。
すごかったぜぇ。
外にインターホンの音が聞こえねえ。
さすが、防音バッチリのマンションだな」
「……だから連打したのか。
こんな夜中にいい度胸だな」
「まぁ、こんなとこに入れる機会なんて今しかねぇからなぁ?」
「……まぁ、君に縁がないところっていうのは間違いないけどね」
「だから感謝してるぜ?」
ひきつった笑顔で嫌味を返してくるも、さらりと尚は受け流す。
そしてそのまま部屋の中を覗くと、ニヤリと笑った。
「さ、入れてくれよ。
今日のご報告と行こうぜ、ご主人様?」
「……君、躾がなってないよね」
「野良犬だからなァ?」
「……反省ぐらいはしてくれ」
はぁ、と大きくため息をつきながら、そのどこか品のある仕草をした男は、ドアをゆっくりと開ける。
尚はニヤリと笑ったまま、その中に吸い込まれていった。
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