2nd-trap:事実は小説よりも奇なり

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4月5日。 新学期初日。 ひよりの緊張はMAXまで上昇していた。 先生に呼んだら教室に入ってきてね、と言われたのはついさっきのことだ。 教室の外の廊下はHR中だからか静かで、それがさらにひよりの緊張を助長する。 独り暮らしをするにあたって編入した高校最初の挨拶。 とりあえず、人って書いて飲んどこう…。 ドキドキした心臓を紛らわすように手に人の文字を書いてそれをひよりが飲み込んだところで、 「木之瀬さーん」 と声がかかり、ひよりは覚悟を決めて、教室のドアを開いた。 う、わ、みんな見てる……! ひよりは教卓の前までゆっくり歩き、そのままクラスメイトの方に向き直った。 心臓の音が早い。 小さく深呼吸を繰り返すと、ひよりは前をしっかり向いて口を開いた。 「はじめまして、木之瀬ひよ――」 「あぶね!!」 その瞬間だった。 先ほど閉めたはずのドアが勢いよく開いたのは。
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