2nd-trap:事実は小説よりも奇なり

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バンッとすごい音と一緒に息の上がった男が勢いよく教室に滑り込んでくる。 茶色の髪、銀色のピアス、わりと整った顔……。 ――ん?! なんだか見覚えのある姿形にひよりが凝視してると、隣にいた先生が 「完全に遅刻よ。 龍崎くん」 とにっこり笑いかける。 それと同時に、クラスがドッと笑いの渦に包まれた。 「尚ー、おせぇよ」 「初日から遅刻ー?」 「また寝坊だろ、どうせ」 「うっせぇ」 口々に告げられるその男への言葉だけで、いかに彼が慕われているかが分かるような様子だった。 隣で先生もため息はついているが、怒っているというわけではないようだ。 っていうか、尚……って。 制服に身を包んではいるが、茶色の髪。ピアスは変わっていない。 お、お隣さん……っ!? 思わずクラスの人たちに笑っている尚を凝視する。 すると、彼もその時初めてひよりに気づいたようでひよりの方に視線をよこすと、「お」と短い声をあげた。
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