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『災難でしたね……』
「ほんとよ!
もう、お隣さんに引っ越してからずっと振り回されてるっ」
昼休みの校舎裏。
非常階段の踊り場でひよりは一目散に牧に電話をかけていた。
ひよりは人見知りの気があるせいか、初日の学校が苦手だ。
それは牧も理解しているので、4月頃のひよりに牧は甘い。
『そうですか…。
お隣さん、お名前は何と仰っているのですか?』
「龍崎尚だって」
『きいたこともないですね。
龍崎尚……うーん。
危険な人物とかではなさそうですが…一応、調べてみますか』
「いいよ。
そんな大層な人じゃないし」
『そうですか?
でも聞いた話だと随分お嬢様と関わりがありそうなので』
「やめて牧。
知りたくもないから」
『分かりました。
では、仰る通りに』
ふふ、と牧が電話越しで笑っているのが聞こえる。
ひよりは一通り愚痴ったところで、ふぅとひとつため息をついた。
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