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「ひより、話があるから来なさい」
呼び出されたのは、半年ほど前のことだった。
珍しく隆文がわざわざひよりの部屋にやってきたこと自体、まず異質だった。
「どうしたの、お父様」
言われるがままに、隆文に連れられてその部屋に行くと、そこでは牧が正座して待っていた。
ほんの少しだけ困ったような表情をしてひよりを見ている。
そのことにひよりは嫌な気配を察知した。
「あの、お父様、話って……」
落ち着け、と自分に言い聞かせながら座布団の上に腰を下ろす。
隆文は厳格な表情を崩さないまま、ひよりの正面の座布団に胡坐をかくと、重い口を開いた。
「ひより、お前の結婚相手が決まった」
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