1st-trap:縁は異なもの味なもの

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そうよね。 牧は、お父様に逆らうことなんてできるわけない…。 牧はひよりの執事ではあるが、それ以前に隆文の部下でもある。 ひよりよりも隆文の命令に忠実なのはどうしようもないことだった。 「お父様……。 私、まだ、16よ?」 「4月2日で、17になるだろう」 「そうだけど、でも…っ! 私、結婚なんて…」 「16で女は結婚できる」 「お父様!」 必死の声で訴えるも、隆文に聞き入れる素振りは一切見られない。 ひよりは、これがもはや現実なのかすらあやふやになってきて、頭を抱えた。 木之瀬の家に生まれた以上、確かに政略結婚になるだろうとは思っていた。 どこのだれかも分からない男と結婚するんだろうって。 でも、こんなに早く? こんなに突然? 私と9歳も上の人と? 信じられない。 「ひより、これは決定事項だ。 変更はない」 「……」 「わかっていただろう、ひより。 散々言い聞かせてきたはずだ」 「……は、い」 そうだ。 散々聞いてきた。 お前は、私の決めた男と結婚しろ。 父がそう言っていた言葉を忘れたわけじゃない。 でも、まだ恋もしたことがないのだ。 ずっと女子高で、ほとんど男の人と関わったこともなかった。
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