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「それならば、お父様…」
「なんだ」
「私の結婚までに一年の猶予を頂けませんか。
その後は私を好きにしてくださって構いませんから……」
「なに?」
隆文の眉間の皺が深くなる。
初めてだった。
父親に反発したのは。
ひよりは正座した膝の上でぎゅ、と拳を強く握った。
それでも、今しかない。
今しか私、もうない。
「私に、一人暮らしをさせて頂きたいのです…!
そして、高校も普通の共学の学校に通わせてください。
私をこのお屋敷から出してください。
結婚する前に、社会を、世界を学びたいんです。
お父様……!」
訴えた声は震えていたと思う。
ひよりの初めての父への反発は、きっと最初で最後のものになる。
だったら私、自由になりたい。
牧もいない、家柄も何もない。
父のしがらみもない世界に出ていきたい。
ひよりは今まで本当はずっと思っていた願いをその言葉に込めて、父親にぶつけたのだ。
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