1st-trap:縁は異なもの味なもの

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「それならば、お父様…」 「なんだ」 「私の結婚までに一年の猶予を頂けませんか。 その後は私を好きにしてくださって構いませんから……」 「なに?」 隆文の眉間の皺が深くなる。 初めてだった。 父親に反発したのは。 ひよりは正座した膝の上でぎゅ、と拳を強く握った。 それでも、今しかない。 今しか私、もうない。 「私に、一人暮らしをさせて頂きたいのです…! そして、高校も普通の共学の学校に通わせてください。 私をこのお屋敷から出してください。 結婚する前に、社会を、世界を学びたいんです。 お父様……!」 訴えた声は震えていたと思う。 ひよりの初めての父への反発は、きっと最初で最後のものになる。 だったら私、自由になりたい。 牧もいない、家柄も何もない。 父のしがらみもない世界に出ていきたい。 ひよりは今まで本当はずっと思っていた願いをその言葉に込めて、父親にぶつけたのだ。
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