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2015室を出た後も、尚の気は晴れなかった。
2015室から出て、自分の部屋に帰る途中、1512室のドアが目に入る。
ひよりは中で眠っているだろう。
何も知らない、幸せそうな顔で。
――お嬢、だもんな。
グ、と尚は1512室のドアを睨んだ。
あの男も、ひよりも、本来なら尚に縁などあるはずのない人間だった。
こんな高級なマンションなんて、絶対自分の金じゃ手に入らない。
金持ちの遊びなんて知らない。
金持ちの世界なんて知らない。
俺は俺で自由にやってけりゃ、いい。
――だけど。
「――お嬢って、すげ」
自分にはない、絶対に持つことのできない白さ。
ひよりといると、自分の汚さが浮き彫りになるみたいで、尚はそっと1512室のドアから視線を外した。
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