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お昼となり、夏美を誘ってみた。 「あら、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、失礼します」と言い、春香と千晴の3人でお弁当を食べた。 何となく不穏な空気が流れていたが、夏美は気にせずにお弁当を食べていた。 春香はいたたまれなくなり、チラッと千晴を見ると「あっ!そういえば、今度ハワイで水着の撮影があるからニ週間休むね♪」と自慢げに大きな声で話した。 春香が「そうなんだ。まだ4月なのに大変だね…」と言いながら、苦笑をした。 「そうなんだよねぇ♪あっ!お土産買ってくるね♪」と言い、スマートフォンを見ていた。 夏美が「ごちそうさまでした。大勢で食べると、美味しいですわね♡」と言い、お辞儀をすると立ち上がって図書室へと行った。 春香はヒヤヒヤしながら千晴と夏美を交互に見たあと、手帳を取り出してゴールデンウィークの予定を確認をしていた。 すると「この日は、どぉ?」と千晴は言いながら、指を差した。 たまたまバイトも休みだったし、部活もなかったからぎこちない笑顔で返事をすると「じゃあ、忘れないでよ〜?」と言うと、千晴はトイレへと向かった。 内心、いつも遅刻をしたりドタキャンをするのはそっちなのに…と思いながら、手帳に書いた。 この手帳は父親がお誕生日プレゼントとして買ってくれたものだったから、大切に使っていた。 本革で、いい感じに手に馴染んできて色合いもしっくりしてきた。 手帳の中には、父親との写真を入れては眺めていた。 写真を見つめていると「素敵なお父様ですねぇ。」と、図書室で借りてきた本を片手にした夏美が覗き込んできた。 春香は慌てながら、手帳をしまうと「あっ…ゴメンなさい。素敵な手帳だったから…」と言い、夏美は申し訳なさそうな顔をした。 春香は初めて手帳を褒められて嬉しくなり、胸が苦しくなり「そっそんな!夏美ちゃんは、何も悪くないから謝らないでね?」と言い、微笑んだ。 夏美が「それならいいんですけど…」と言うと「うん!これね、お父さんからのプレゼントなんだ。」と言い、手帳を机の上に置くと父親との思い出や今までのことを正直に話した。
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