52人が本棚に入れています
本棚に追加
体育館へ着いて、準備体操をしていると雷が遠くで鳴っていた。
春香は雷が大嫌いだった。
小学6年生のときに自分の部屋で昼寝をしていたら、藤村に無理矢理犯されそうになったことがあり、それが今日の天気みたいに土砂降りの雨で雷が鳴っている日だった。
春香は心の中で「大丈夫」と言い聞かせ、部活動に励んでいた。
部活を早めに終えて体育館倉庫で後片付けをしていると、照夜が入ってきた。
春香はドキッとしていると「今日、どした?何か変だぞ?」と言い、春香に近づいたときだった。
大きな雷とともに、停電になった。
春香が「キャァアア!!」と言い、耳を押さえながらしゃがみ込むと「大丈夫か!」と言いながら、照夜は春香に駆け寄った。
春香はパニックになりながら「やだ…来ないで…」と泣きながら言うと、怯えた顔で照夜を見ていた。
照夜が「バカ!」と言いながら、春香を抱きしめた。
春香はフラッシュバックして、藤村の顔と照夜の顔が区別出来なくなり「イヤァア!!」と言い、泣き叫んだ。
それでも照夜は春香を抱きしめながら「大丈夫。俺は、オフクロさんの彼氏じゃない!」と言い、さらに力強く抱きしめた。
春香が「言うこと何でも聞くから…」と言い、照夜の手を持って自分の胸へ運ぼうとすると「バカッ!もっと自分を大事にしろっ!」と言い、春香をビンタした。
春香がビックリした顔で照夜を見つめていると「悪い…」と言い、立ち去ろうとすると「待って…!怖くて、立てないの…」と春香が言うと、照夜は振り返ってまたしても春香の前にヤンキー座りをした。
春香はドキドキしていると、照夜が春香の顔を撫でて親指で涙を拭い、唇を親指でなぞりながら見つめていた。
「先生…?」と春香が呟くと「やっと戻った?」と言いながら優しく微笑み、春香の頭を優しく撫でて「もう大丈夫。」と言い、自分の着ていた上着のジャージを春香に着せて何処かへと向かった。
春香はジャージを抱きしめながら、照夜が無事に帰って来られるよう祈りながら更衣室へと向かった。
しばらくして、電気が復旧し後藤先生と一緒に談笑をしながら歩いている声がした。
「いやぁ…この学校も非常灯が設置されていないとは…」と言いながら、照夜が苦笑をしていると「そのためにA棟が工事してるんだろーが」と笑いながら会話をしていた。
急いで更衣室から出て、春香が「塩田先生っ!!」と呼ぶと「んっ?」と言いながら、振り返った。
後藤先生が「あらら…まだ残ってたのか…早く帰りなさい」と言い、照夜の肩を叩くと去って行った。
春香はドキドキしながら「あっあの…さっきはありがとうございました…ジャージ、洗って返しますね」と言い、お辞儀をすると「そんな気ぃ遣わなくていいよ。今交通機関の情報を見たら、電車が運休してるみてぇだから、送ってくよ」と言いながら、ウィンクをした。
春香が「でも…先生に迷惑かけちゃう…」と言い、心配そうにしていると「あんな姿を見せられたら、一人にしておけねぇだろ」と言い、去って行った。
その言葉に、春香はドキドキした。
最初のコメントを投稿しよう!