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春香の部活はバレー部だった。
千晴と別れて更衣室へと向かって着替えて、髪の毛をポニーテールにすると「今年からゴリじゃなくて、塩田先生だってぇ♡」と言う声が上がった。
ゴリこと後藤眞先生は、厳しくて泣き出す生徒が何人もいたため、家族からの苦情が多かったとのことでバスケット部に異動になった。
またしても憂鬱になりながら、体育館へと向かうと照夜が立っていた。
春香はまだ後藤先生の方が話しやすかったし、厳しい中にもユーモアがあって信頼をしていた。
「遅い…」と気だるそうに言われ、体育館を四周するように言われた。
そのやる気の無さに、春香はあからさまにムッとした顔をしたものの言われた通り体育館を走った。
ふとバスケット部の方を見ると、相変わらず後藤先生が厳しく指導をしていた。
春香は走り終えると、後藤先生が教えてきた準備体操をしていた。
照夜は何かを読みながら指導をしていて、ほぼ放ったらかしだった。
春香はその姿勢にもムッとしながら、練習に励んだ。
数人の生徒が「塩田先生ぇ〜見ていただけますぅ?」とぶりっ子声で話しかけると、またしても気だるそうに「あんさ、邪魔しないでくれっかな?」と言うと、またしても何かを読み始めた。
春香が「あの!後藤先生はキチンと目を見て指導をしてくれましたけれど、塩田先生は何しに来たんですか?」と言うと「んっ?お前らが温室育ちで甘やかされてきて、後藤先生が他の部活に異動になったンだろーが?」と言い、春香の前に立った。
男子にイジメられたトラウマがだんだんとフラッシュバックしてきて、恐怖で心臓がバクバクしながらパニックになっていると「どした?んっ?」と言いながら、照夜は春香の顔を覗き込むと、春香はいきなり泣き出してしまい「ったく…これだから女はメンドクセェな…」と言いながら、頭を掻くと「塩田くん!何してんだ!!」と後藤先生が言うと、駆け寄ってきた。
後藤先生には、家族以外で心を開いていた数少ない男性で、小学生から中学生までイジメられていたことを話していたため、後藤先生は春香を気にかけてくれていた。
照夜が「えっ?俺はただ正論を言ったままでですが?」と言うと、春香の呼吸がだんだんと早くなっていき過呼吸の発作を引き起こし、その場に倒れ込んだ。
さすがにマズイと思ったのか、照夜が「あーもぅ、メンドクセェなぁ!」と言い、春香をお姫様抱っこすると保健室へと連れて行った。
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