答えはもうずっと前から決まっていたんだ。

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答えはもうずっと前から決まっていたんだ。

 驚きに目を瞬かせた、その顔に優越感を湧かせて、名前を紡ぎかけた唇を塞いだ。初めて触れた唇は柔らかくて、しっとりとしていた。 「んっ」  気をよくして深く押し入ったら、小さく声が漏れ聞こえる。ちょっと身長差で、俺のほうが上向かなくちゃいけないのが癪だが、これはこれで悪くない。 「え? 笠原さん?」  唇を離せば目を瞬かせて、頭に疑問符を浮かべている顔があった。理解が追いついていない顔だ。息を吐くように笑えば、小さく首を傾げられる。 「なんだかずっと、主導権を握られっぱなしでしっくりこなかったんだけど。なんかいまわかった気がする。俺、嫌いじゃないよ。好きだよ、鶴橋さんと同じ意味で」 「え?」  言葉を飲み込んで、いまようやく理解が追いついた。それが目に見てわかる。目の前の顔は頬が染まり、熱が広がるみたいに耳まで赤くなった。 「そういう可愛い顔がすごくいい」 「か、可愛くないです!」 「可愛いよ」  いままで押されっぱなしだったから、うろたえる顔を見ると気分が上がる。きっと受け身でいる自分の反応に違和感があったんだ。だからストンと気持ちが落ちてこなかった。  振り回されてペースが崩されて、翻弄されている自分が嫌で意固地になっていた。多分男としての、なけなしの意地みたいなもの。 「正直言って全然好みじゃないし、ノンケだし、男前すぎるし、対象外って感じなんだけど。まっすぐに自分だけを見て、好き好き言われ続けるといい気になってくる。だけどすげぇ押されまくりで、その気持ちが自分の感情じゃないみたいな気分にもなるんだ」 「それでも好きだって言ってくれるんですか?」 「ノンケが嫌なのは変わってないよ。俺と付き合っても、あんたが女を好きになる可能性がゼロになるわけじゃない。だけど俺は不安になったし嫉妬もした。頭で考えているよりも好きなんだ」  あの時ひどく気分が重くなったのは、どの選択をしても後悔しそうだったからだ。  選ばない選択をしたら、手に入れなかったことを後悔をする。  だけど恋人として選択しても、ずっと好きでいてもらえる確信が持てなくて、後悔した。  でもその感情の裏を返せば、好きだからどうしてもこの男が欲しいって言うことだ。
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