515人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
相談する相手を間違えたかもしれない。
一晩かけて、断る理由を考えてしまった。そもそもあっちは、どうしたいって思っているんだろう。俺を抱く気でいるのか、それとも抱かれてもいいとか?
え、それを言われたら逃げ場なくない?
駄目だ、他の理由を考えないと。もっと効果的な振り方を。
しかしそんなものわかるわけがない。こちとら彼氏を作るのも一苦労なのに、振るとか考えたことないって!
だからと言ってあのノンケと付き合うのは、絶対にないない。うまく行きっこない。
「あー、もしもし光喜?」
「おはよ。どうした、勝利。珍し」
「そのショウリやめろ。俺の名前はマサトシ!」
暢気な声で電話口に出たのは、幼馴染みの時原光喜。小中高と同じ学校に通っていた。大学になって離れたので、最近では会うのも電話するのも滅多になくなった。
こいつとつるんでいると、男も女もそっちに目移りするので、一緒にいたくないと言う理由がある。そう、この男の属性は男前だ。
そんな男前になんのために電話したかって? そりゃあ、相手を振る方法を聞くためだ。
クォーターで腹が立つくらい整った顔をしているので、相手の一人や二人、三人や五人。振ることくらいあるだろう。
「ええ? 勝利の恋バナ久しぶり」
「恋バナじゃねぇ! 恋にすら発展してない!」
「いいじゃん、相手いまいないなら付き合っちゃえば。そういう一途なのって、なんでも言うこと聞いてくれそうじゃない?」
これまた暢気な声で笑う光喜に、通話を切断したい気持ちになったが、俺の性癖を理解していて親しい相手はこいつくらいだ。
他に相談できる相手がいないので、なんとかこらえた。
「俺は迷惑してんの! だってあいつストーカーっぽいし」
「へぇ、そんなに勝利のこと好きなやついままでいなかったのに。もったいない。イケメンなんでしょ。顔がいいやつが自分にぞっこんなの優越感だけどな」
「そ、それは、確かに、そうかもしれないが、それとこれは別にしてくれ!」
いかん、いまうっかり乗せられそうになった。光喜のこの軽さに、うっかりほいほい乗せられていたら身が持たない。
言いたい放題言って、責任なんて取ってくれないし。
「じゃあ、俺と付き合う?」
「はっ?」
いまものすごく、よくわからないことを言われた。
最初のコメントを投稿しよう!