相談する相手を間違えたかもしれない。

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相談する相手を間違えたかもしれない。

 一晩かけて、断る理由を考えてしまった。そもそもあっちは、どうしたいって思っているんだろう。俺を抱く気でいるのか、それとも抱かれてもいいとか?  え、それを言われたら逃げ場なくない?  駄目だ、他の理由を考えないと。もっと効果的な振り方を。  しかしそんなものわかるわけがない。こちとら彼氏を作るのも一苦労なのに、振るとか考えたことないって!  だからと言ってあのノンケと付き合うのは、絶対にないない。うまく行きっこない。 「あー、もしもし光喜(みつき)?」 「おはよ。どうした、勝利(しょうり)。珍し」 「そのショウリやめろ。俺の名前はマサトシ!」  暢気な声で電話口に出たのは、幼馴染みの時原光喜。小中高と同じ学校に通っていた。大学になって離れたので、最近では会うのも電話するのも滅多になくなった。  こいつとつるんでいると、男も女もそっちに目移りするので、一緒にいたくないと言う理由がある。そう、この男の属性は男前だ。  そんな男前になんのために電話したかって? そりゃあ、相手を振る方法を聞くためだ。  クォーターで腹が立つくらい整った顔をしているので、相手の一人や二人、三人や五人。振ることくらいあるだろう。 「ええ? 勝利の恋バナ久しぶり」 「恋バナじゃねぇ! 恋にすら発展してない!」 「いいじゃん、相手いまいないなら付き合っちゃえば。そういう一途なのって、なんでも言うこと聞いてくれそうじゃない?」  これまた暢気な声で笑う光喜に、通話を切断したい気持ちになったが、俺の性癖を理解していて親しい相手はこいつくらいだ。  他に相談できる相手がいないので、なんとかこらえた。 「俺は迷惑してんの! だってあいつストーカーっぽいし」 「へぇ、そんなに勝利のこと好きなやついままでいなかったのに。もったいない。イケメンなんでしょ。顔がいいやつが自分にぞっこんなの優越感だけどな」 「そ、それは、確かに、そうかもしれないが、それとこれは別にしてくれ!」  いかん、いまうっかり乗せられそうになった。光喜のこの軽さに、うっかりほいほい乗せられていたら身が持たない。  言いたい放題言って、責任なんて取ってくれないし。 「じゃあ、俺と付き合う?」 「はっ?」  いまものすごく、よくわからないことを言われた。
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