Sadism Ⅳ

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Sadism Ⅳ

 全ての原因は、私の見栄だ。実家は貧しく、ずっと贅沢をしたことがなかった。そんな私は、就職して初めてのボーナスで、人生初のブランドバッグを買った。それが、私の運命を変えることになるなんて、その時は思いもしなかった。  真新しいブランドバッグを見た同僚達が、私を羨ましがる。それが、心地よくてならなかった。初めて得た快感に、私はどっぷりと浸ってしまった。常に羨ましがられずにはいられない。そのために、常に最新のアイテムを買い揃える。その繰り返しだ。  とはいえ、私の給料なんて、雀の涙程度のものだ。だから、私はクレジットカードで買い物し、リボルビング払いでその場を誤魔化し続けた。だけどあっという間に限度額に達し、今度は消費者金融に手を出す。それもダメになると、闇金融に手を出した。気がつけば、私は借金で雁字搦(がんじがら)めになっていた。  いかにも怪しい格好の男が私を訪ねてきたのは、一ヶ月前のことだった。男は押し入るように家に入ってくると、居間にどっかりと腰を下ろす。 「なあ、いつになったら借金返してくれるんだよ」 「すみません、今月末に、一万円くらいなら」 「おいおい、それじゃ全然話にならねえよ。借金は六百万だぜ? 一万じゃ利息にもなりゃしない」 「お願いします。何とかしますから待ってください」  私は床に頭を擦り付けた。
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