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私は屋敷の中の広い部屋で飼われている。服は与えてもらえず、普段は小さな檻に入れられて。カーテンは常に閉ざされ、部屋の中は昼でも薄暗い。夜になるとただの暗闇だ。
私の首には鉄の首輪が付けられ、檻に繋がれている。外してもらえるのは、トレンチコートを着たあの男がやって来たときだけ。だけど、ワタシは決して開放されるわけではない。別の器具に拘束されるだけで、自由を奪われた状態であることに変わりない。
トレンチコートの男は、一日に数回、私の所にやって来る。三度の食事と、私を甚振るときだ。食事のとき、私は手を使うことを許されず、皿に口を付けて食べなければならない。私は犬だ。
キギッと扉が軋む音が部屋の中に響き、廊下の明かりが射し込んでくる。続いて、部屋の電気が点けられる。真っ暗闇の中にいた私は、眩しさに耐えきれず、思わず目を閉じる。
「いい子にしていましたか?」
トレンチコートの男が近づいてきながら尋ねる。
「ワン」
「よろしい」
男は満足げに微笑む。
私は言葉を話すことを許されていない。発していいのは、“ワン”の二文字だけだ。逆らえば、容赦なくムチで打たれる。私の体には、ムチで打たれた傷が無数に残っている。
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