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「なっ!何だ!?」
地響きに不埒な若者達は、バランスを崩して腰を抜かす。
地割れと共に岩礁も割れ、怨念に満ちた紫色の閃光と共に、何かの腕が瘴気と共に溢れ出た。
それは籠手を纏った爬虫類の前脚に似て、装甲の隙間には鱗がぎっしり並んでいた。
這い出て来た頭には、兜の鍬形と呼ばれる角が出でる。
それは面表を嵌めた肉食恐竜の様な顔立ちで、全身甲冑を着た家ほどの大きさの、鎧武者の怪獣である。
「あわわわわわ…」
間近で怪物を見た若者は腰を抜かし、離れた場所の若者は、及び腰で仲間を見捨て、クルーザーに逃げようとする。
「応オオオオオオオオォオオオオオオオ!!」
恐ろしい咆哮を上げ、全身を地上に現した怪物は、なんと右腕は鉈の様に太い野太刀である。
それで居合切る様に、足元の若いチャラ男から両断した。
「いやあああああああああああ!」
若いギャル風の女は半狂乱で泣き叫ぶも、男は守ろうともせず逃げ惑う。
怪物は長い尻尾をくねらすと、尾先に有る槍状の棘で女を突き殺す。
そしてそれで岩礁に投げ付けると、原型を留めぬ挽肉と化した。
「畜生!何だ!何だよあの化け物は!?」
逃げ延びた男は、震える手でクルーザーのキーを、捻じ切れんばかりに回し続ける。
焦りのせいでエンジンは中々掛からない。
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