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「かかれ!かかれかかれ!神様お願いかかって!」
それまで一度も信じた事のない神に祈ると、思いが通じたのかクルーザーのエンジンは、今まででは考えられなかった程、頼もしく力強く点火された。
「やった!やったぞ!」
怪物は恨めしそうにクルーザーを睨むと、海に背を向けた。
若者はそれを見て、怪物は自分を追う事を諦めたのだと確信し、開放感と安堵に心躍らせた。
「やった!やったぞ…ぐふ!?」
気がつくと、若者の背中は太い矢で貫かれていた。
彼だけでなく船体にも、次々と刺さっている。
島を再度振り返ると、なんと鎧武者怪獣は背中から、背鰭を矢として雨霰と射って来ているのだ!
「そんな…ぐはあッ!」
顔に矢を受けた若者は、自分が最後に見た光景に戦慄しつつ生き絶えた。
矢はエンジンの燃料タンクも貫くと、クルーザーは花火より美しく舞い散った。
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