眠りを覚ます

4/4

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「かかれ!かかれかかれ!神様お願いかかって!」 それまで一度も信じた事のない神に祈ると、思いが通じたのかクルーザーのエンジンは、今まででは考えられなかった程、頼もしく力強く点火された。 「やった!やったぞ!」 怪物は恨めしそうにクルーザーを睨むと、海に背を向けた。 若者はそれを見て、怪物は自分を追う事を諦めたのだと確信し、開放感と安堵に心躍らせた。 「やった!やったぞ…ぐふ!?」 気がつくと、若者の背中は太い矢で貫かれていた。 彼だけでなく船体にも、次々と刺さっている。 島を再度振り返ると、なんと鎧武者怪獣は背中から、背鰭を矢として雨霰と射って来ているのだ! 「そんな…ぐはあッ!」 顔に矢を受けた若者は、自分が最後に見た光景に戦慄しつつ生き絶えた。 矢はエンジンの燃料タンクも貫くと、クルーザーは花火より美しく舞い散った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加