第1話

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「よりにもよって飛翼学園の入学式を狙うなんて、バッッカじゃないですか? しかも配達日間違えたとかって怪しさ爆発で前日から爆弾なんて仕込みにきて!」 「というより、明らかにおかしいのに門通すのがバカ。門番は共犯じゃなくてもクビかな」  賑やかに声が飛び交う一室。にこにこと笑いながらテーブルに広がるややジャンクな料理に手を伸ばすのは先ほど学園に侵入した敵勢力を笑顔で一網打尽にした少女、暁藤花(あかつきとうか)。その隣に並び無表情でコーヒーを飲んでいるのは共にあの場を鎮圧した少年、天馬秋真(てんまあきざね)である。 「まぁまぁ。藤花、秋真も、入学前に悪かったな、ほらナゲットも食っていいぞ」 「やったぁ! 出雲先輩ありがとうございます、らいちゃんと末永く爆発してください!」 「ばくは……このタイミングでそれは……礼なのか……?」  その二人を前に苦笑しつつも労いの言葉をかけるのもまた、二人の一学年上に在籍する、二人と同じく警備騎士隊の出雲和成(いずもかずなり)。  三人は二つの区を跨ぐ空青総合学園特区にある飛翼学園の生徒であり、さらにはそこを警備する騎士隊の中でも特に優秀とされる能力者たちだ。  事の発端は明日に控えた高等部新入生の為の入学式の準備中。内部進学生は中等部の隣の校舎に移るだけとはいえ、入学前より警備騎士隊に所属が決まっていた新入生の三人が、今年度の警備騎士隊推薦者リスト把握の為、入学式より一日早く真新しい制服に袖を通し高等部の敷地内に足を踏み入れた時のことだった。  三人のうちの一人が、ホールに向かってとろとろと走る花屋のロゴが描かれた車を見て、爆弾、と呟き顔を青ざめさせたのが切っ掛けだ。  中等部一年から既に警備騎士隊として活動していた三人は即座に状況を理解し、所属部隊のリーダーである一学年上の警備騎士隊員、出雲和成に連絡を取った。索敵担当で非戦闘員である爆弾を発見した少女、花山院来夢(かさのいんらいむ)を合流した和成に託してすぐ、よからぬことを企む外部からの侵入者を戦闘員である藤花、秋真両名が追い、鎮圧した。説明すればそれだけのことだが、学園側としては非常に頭の痛い案件である。なにせ相手は外部から門を正規の手続きで通過した侵入者であり、学園生徒ではなく関係者外の大人の犯行であり、見過ごし通過させたのは学園の関係者で、制圧したのは生徒である。  ひきつった笑みで功を労い、口止め料を含んだ昼食を振舞った上官となる警備騎士隊担当教諭と騎士隊長は、現在後始末に奔走中だ。  彼女たちは大人がこの件を隠したがっていることは気づいていても、思うところはあれど口に出すことはない。願わくば自分たちに火の粉がかかるようなことをするな、ただそれだけである。うまくやってくれ。
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