第3話

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第3話

 あれ程入学式で目立っていたとはいえ、警備騎士隊の三人が騒がれたのはほんの数日。いや、どこへいっても注目を浴びるのだが、ようはその光景も慣れたものということだろうか。本人たちが気にしない為に多少騒がしいのもまぁ日常の風景として外部進学の生徒もようやく学園生活に慣れ始めたある日の午後。  この学園は高等部より全寮制であり、昼食は学食か売店で各自購入が基本だ。藤花たちもまたSクラスで仲良くなったメンバーで教室の机を囲い昼食を取っていた。学食も気になるところではあるのだが、藤花と秋真がめんどくさいと言い切ったのを切っ掛けに売店で購入したものを教室や屋上といった場所で食べる日が続いている。 「ま、確かに。あんたら行くと周りうっさいもんね、食事どころじゃないよ」 「そうなの? まぁ、想像つくけど」 「マジでやばい。八人掛けのテーブルなんてついた日には、空いたテーブルの争奪戦でうるさいったらない」  席を囲んでいるのは藤花たちの他に、女が一人と男が二人。うち一人は外部からの新入生でSクラスになったばかりの鈴山俊(すずやましゅん)。席順では最後尾真ん中で、藤花の隣。もう一人の男子は窓際後ろから二列目、秋真の前の席で来夢の左隣の席である小等部からの秋真の友人、月見里龍之介(やまなしりゅうのすけ)。そしてちょうど教室のど真ん中の席である中等部から藤花たちと付き合いのある右京桜子(うきょうさくらこ)。  男女三人ずつでちょうどいいじゃん、という、その数字に意味があるのかないのか、まぁ適当に過ごしていて自然と集まったメンバーだったのだが居心地が良く、この時間が一番幸せとは揃った意見であった。 「覚悟はしてたけど、ほんとこの学園のSクラスの授業スピード……」 「なぁに言っちゃってんの学年三位! すぐに実力テストだぜ?」 「うげ……思い出させるなよ……あたしやばい気がする」  頭を抱える桜子が落としかけたパックジュースを慌てて来夢が支える横で、藤花はひたすらサンドイッチを頬張り、秋真は藤花からもらったサンドイッチひとつを早々に食べ終えぼんやりとコーヒーを飲む。お前もっと食えよと龍之介が秋真におにぎりを差し出すが、もう食えないと秋真はスルーだ。代わりに藤花がきらりと目を光らせる始末である。相変わらず良く食うなと呆れた様子の龍之介を見ながら、この中では新参者の自覚がある俊は新しい友人たちを観察する。顔面偏差値の高さに最初は眩暈も覚えたが、慣れて見れば彼らはいたって普通ともいえる休み時間を過ごしていて、そしてそりゃそうだと落ち着いてからは楽しいものだ。彼らも同じ高校生なのだから。
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