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檸檬色の香気は、どうして僕を狂わせる?
僕はレモンの香りが大嫌いだ。
酸っぱくて、それでいて少し涼し気な、あの爽やかさがムカつく。
噛んだ瞬間、鼻の奥をツーンと刺激してくるあの大胆さが嫌いだ。
油断するとクシャミを誘発する悪戯心もウザい。
あぁ、あぁ、、、。
、、、レモンは『檸檬』だけでよかったのに。
彼女は、檸檬は、
枝毛一つない黄金の髪は爽やかな風に揺れ、
僕の隣にズカズカと歩み寄る君は実に大胆で、
くだらない悪戯で僕を困らせた彼女は―――。
僕の隣でレモンを切っている。
それも、たっくさん。
「おいっ、クソったれ檸檬ッ! 俺、レモン嫌いっていったよな!?」
「うるさいわね!せっかく10袋買ったんだから、食べないと損でしょ!?それと、アンタどっちのレモンにいってる!?返答によってはレモンと一緒に薄切りにするわよ!?」
「レモン、レモン、うるせぇえ!どっちも嫌いだボケぇっ!」
「ひ、ひっどぉーい!」
「大体、いくら安売りしてたからってそんなに買ったら意味ないだろ!?賞味期限とか見たのかよ!?」
「う、うるさいわね!今食べればいい話でしょ!」
「くえるかーッ」
僕は山の様に積んであるレモンの薄切りを見ながら頭を抱えた。
……だから僕はレモンが嫌い。
という話。
--END--
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