夏祭り

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夏祭り

「ケアマネ、今年もよろしくお願いします」 「はい、どうぞ〜」  何時もの事だが、行事が近付くと準備した物をケアマネ事務所に保管しておく。普段は地下の倉庫にしまってあるが行事が近付くと出して来る。  運動会の前なんて凄い荷物だ。大玉送りの大玉や玉入れの網の付いたボール、それを赤組白組の2チーム分、その他競技に使う大通具がケアマネ事務所を占拠する。  今回の夏祭りの準備の品も結構多い。飾り付け用の提灯やボンボンを浮かべるビニールプール、職員が着るハッピや利用者さん用の浴衣などなど。夏祭り前日にはきわ美も担当する綿あめの機械がリース会社から届くのでそのスペースは開けておかなければならない。  ケアマネ事務所の半分以上が物で埋まる。きわ美は片付けしておいて良かったと胸をなで下ろした。 「今年の夏祭りの責任者なの?」 「はい」 「大変だね。頑張ってね」 「ありがとうございます!」  久保田介護師が元気良く返事をした。久保田は要領も良く仕事が早いので責任者には適任だ。準備品のチェックリストを作りせっせとチェックをしている。当日のスケジュールや職員の配置などもすでに出来ている。  きわ美はこの施設の介護師では無くて本当に良かったと思う。行事の責任者は介護師が交代で務める事になっている。自分だったらこんなに手際よく余裕のある準備なんて出来そうに無い。 「久保田さんて要領いいよね」 「それ、前にもケアマネに言われました」 「そうだっけ?」  年を取ると物忘れが増えてくる……いや、まだそんな年ではないか。そんな事を思いながらきわ美は感心しながら久保田を眺めていた。
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