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ケアマネのお仕事
人生50年と言うけれど。
「いつの間にか100になってしまったよ」
窓際にあるベットの横で車椅子に座っている老紳士が呟いた。
「そこの杏の木、」
老紳士がガラス越しに見える一本の杏の木を指差した。
「この施設が出来た時植えられたんだが、今20歳だ。私のひ孫みたいなものだね」
ここは特別養護老人ホーム『アプリコットガーデン』。介護を要する高齢者が生活する施設である。
「村石さんは何か希望はありませんか? やりたい事とか、行きたい所とか」
老紳士に質問するのは瀬戸きわ美、現在人生50年、この施設のケアマネである。今日は村石さんのケアプランを立てるためにご本人の希望を聞いていた。
「やりたい事と言ってももう殆どやり尽くしたし、この体じゃ出歩くのも大変でねえ」
「じゃあ今何が楽しみですか? 歌とか、あ、お習字上手ですよね」
利用者さん一人一人にケアプランを立てなければいけない。ケアプランを立て、それに従って介護、支援が行われていく。その介護に対して報酬が支払われる。そう、ケアプランが無くては施設は儲けが出ない。
今日中にケアプランを仕上げなければいけないという任務をきわ美は背負っていた。そのためきわ美は何とか村石さんから希望を聞き出そうとしていた。
「歌はもう声が出ないし、習字は手が上手く動かないし……」
「じゃあレクリエーションはどうですか? 楽しみながら運動も出来るし」
「人の集まる所は苦手だなあ」
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