介護師さんたち

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「ケアマネ。今度入所する方だけど……あら、モッチー、何やってるの? もうみんな働いてるわよ!」  突然ケアマネ事務所に入って来た主任に注意され、持田は慌てて現場に戻って行った。 「モッチーはまだ学生気分が抜けないみたいで困っちゃう。もう社会人なんだからしっかりしてもらわないと」 「私が話し掛けて足止めしちゃったんですよ。ごめんなさい」 「まあそれなら仕方無いけど、そうじゃ無くても仕事遅いんだから早目早目に行動するクセを付けて貰わないと」 「まだ入ったばっかりだし、遅くて当たり前ですよ。私たちだって新人の頃は先輩に迷惑を掛けたもんじゃ無いですか」 「あら、私は新人の頃から仕事早かったわよ」  ああそうですか、私と一緒にして悪うございました、と口には出さなかったが心の中できわ美は思った。 「ケース? モッチー今ごろ持ってきたの? まったく呑気なんだから。ケアマネ気合い入れてあげたでしょうね」 「あー、アハハハ……」  まさか誉めたり世間話してたとも言えず笑って誤魔化した。 「モッチーの担当3人だけなのに今ごろ持ってくるなんてね」 「まあまだ慣れてないし……」  持田の担当は3人、今一つベットが空いている。 「じゃあ今度入所する方は持田さんの居室ですか?」 「どうしようかと思って。まだモッチーじゃ新しく入る人担当させるのは無理っぽいし。だからモッチーの居室に市川さんを移動させて新しい人には違う介護師に担当してもらおうと思うのよ。どうかしら?」  確かに主任の言う通りだった。新しく入所される方の担当ともなると観察や記録、ケアについて他の職員への周知など、色々な仕事をしなければならない。まだ持田には早いような気がする。今回は新しい利用者さんへの対応を勉強する機会にして貰おう。 「市川さんなら難しい介護もいらないから新人モッチーにはいいと思うのよ」  市川さんは寝たきりで全介助の利用者さんだ。問題行動が在るわけでは無く、本人からの希望が在るわけでも無く、担当するには"楽"な利用者さんではある。 「いいと思います。あまり居室替えるのは良くないですが、市川さんだったら大丈夫だと思います」 「でしょ? 名案でしょ? 私が考えたのよ」  主任が得意気に言うので「凄い凄い」と適当に誉めると主任は上機嫌でケアマネ事務所を出て行った。  新しい人が入るとなるとまたケアプランの心配をしなければならない。入所予定者の資料を見ながらきわ美は溜め息をついた。
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