介護師さんたち

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 その月の月末、きわ美の元へは続々とケース記録が持ち込まれて来ていた。  その中で一番に提出したのは久保田介護師だった。久保田介護師は介護師になって3年目。来年介護福祉士の資格を取るために勉強中だ。  久保田はとにかく仕事が早い。要領も良い。毎朝出勤してくると今日やるべき事のチェックリストを作りキッチリと仕事をこなしていく。それを初めて見た時、きわ美は久保田に言った。 「久保田さんは要領がいいんだね」 「いえ、要領が悪いからチェックリストを作ってるんです」  いや、それが要領いいって言うんだよと思いきわ美も真似をしたが三日坊主で終わった。    そんな久保田を主任も信頼していて、今回新しく入った利用者さんを担当させた。入ったばかりなのでケアプランは様子観察だったが、来月にはちゃんとしたケアプランにしなければならない。そのヒントにと久保田の書いたケース記録を読み始め、きわ美は驚いた。  早く提出したのに凄く細かく書かれていた。そして最後に今後こう言うケアをしていきたいと具体的にまとめてあった。殆どの介護師は月末に慌ててまとめて記録するのだが、きっと久保田は毎日記録をしていたのだろう。要領がいいと言うよりは几帳面なのだ。  きわ美は早速久保田の提案をケアプランにした。毎日きちんと見てきた久保田の提案だ。他に考える必要も無い。  お昼休みに久保田にその事を伝えると久保田も嬉しそうに「ありがとうございます、頑張ります」と言った。  きっと明日から久保田のチェックリストの項目が一つ増える事だろう。
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