介護師さんたち

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介護師さんたち

「ケアマネ、ケース記録書いてきました。遅くなってすみません……」  お昼休みが終わる頃、今年高校を卒業して新卒で入ってきた一番新入りの介護師、持田姫がケアマネ事務所へやってきた。  先輩介護師から「モッチー」とか「姫ちゃん」とか呼ばれている。新人でありまだ介護についても知識不足ではあるが、元気に笑顔で走り回っている。  ちょっと慌てん坊な所があり、見るたびに注意を受けているが、利用者さんには親しみを持って接している。きわ美の好きなタイプの介護師さんだ。 「来月からは気を付けます……」  ケース記録とは。介護師は一人一部屋ずつ担当の居室があり、その居室の利用者さん4人を自分の担当として受け持っている。その利用者さん一人一人のケアプランの実施状況の評価や日々の様子などを記録し、毎月月末に提出しなければならない。もう今月も中旬。持田は結構のんびり屋だった。そういうきわ美もまだ全員分の確認なんて出来ていなかったので提出が遅れていた事さえ気付いてはいなかった。  持田のケース記録は中々読み応えがあった。言うなれば、利用者さんが主人公の小説を読んでいるような感じだった。また文字が大きく力を込めて書いたのであろう、紙が破れそうなほどへこんでいる。おおらかで熱心な性格なのが良く分かる。ただ記録としてはもっと簡潔に分かりやすく書く必要はあった。 「持田さんは漢字や難しい言葉知ってるよね。感心しちゃう」 「え、そうですか……」 「本とか良く読むの?」 「はい、本はお父さんが好きでいっぱい持ってるので私も良く読みます」 「やっぱりね」  普通は使わない言い回しとか、利用者さんの心理描写とかが面白かった。 「持田さん、利用者さんとよく話をしてるよね。感心して見てるよ」 「え、そうですか。私お婆ちゃん子だからお年寄りと話すのが好きなだけです。だから先輩たちには『いつまで喋ってるの』って怒られてばっかりです」 「え~、話すのも仕事の内だよ。そっか、怒られちゃうんだ。そんな時は私呼んで。持田さんの代わりに私が介護の仕事するから」 「え、……ありがとうございます」  まあ呼びになんて来ないだろうけれど、つい応援したくなるキャラクターだった。
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