老人ホームあるある①

1/4
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/251ページ

老人ホームあるある①

 老人ホームには入所されている利用者さんだけではなく、短期間だけ利用されるショートステイの利用者さんもいる。  家族の介護負担の軽減のためだったり、独居で訪問介護だけでは不十分な方が定期的に利用されたりと理由は様々だが、基本ショートステイはすでにケアプランの一つとして入所されるので施設で改めてケアプランを作成する必要は無い。だが一応利用される方全員にプランは立てなければならないので作るは作るが、大抵は「ショート利用中の様子観察」で事足りる。  ショートの利用者さんも殆どが常連さんで、入所の時は「前回とお変わりはありませんか?」と聞く程度で受け入れる。  今日入られた長谷部さんも、毎月決まって入られている常連さんだ。長年リウマチを患っていらして現在寝たきりではあるが、とてもしっかりされていて頭の良いお婆さんだ。  ただ今回の利用は、いつもの利用とはちょっと違っていた。 「長谷部さん、いらっしゃい。またお世話させて頂きますね」  きわ美がいつものように挨拶に行くと、「こちらこそ宜しくお願いしますね」と笑顔で応えて下さった。だが何処かいつもと違って寂しげだった。  ショート利用の前には、担当のケアマネさんからの書類が来る。いつもは「介護者の負担軽減のため」と書かれていたが、今回は「介護者の冠婚葬祭のため」と書かれていた。  介護者である家族が冠婚葬祭に出席するため施設に預けるというのはよくある。突然遠方でお葬式となり、夕方になって急遽入所される方もいる。だが長谷部さんの場合は結構前から予定が入っていた。予定が立てられる冠婚葬祭、それは結婚式だ。 「今度の日曜日、孫が結婚するんですよ。それも式はハワイなんです。お相手が留学先で知り合ったアメリカの方でね。流石に私はハワイまでは行けないのでお留守番なんです」  可愛い孫娘の結婚式に参列出来ずに寂しそうだった。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!