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100㌫デートなんです!
公園の中。車椅子を押してふたりで散歩。
「どんな詩をお書きになるの?」
「うーん。いろいろです」
「たとえば・・・」
「空を見て書いたりします」
見上げた空。
白い雲、空いっぱいに大きい。
僕らふたりを包み込むみたいに・・・
「空ってすぐ変わるんです。
十秒だっておんなじ姿をしてません。
何回、何十回、何千回。信じられないくらい美しい空を見ました。
すぐ、姿を変えてしまう。
だけど自分の心には残るんです。
自分の心にいつまでもいつまでも、美しい空が広がってるんです。
だけど・・・
つらいときとか・・・
苦しいときとか・・・
悲しいときとか・・・
心の空が消えてしまうんです。
心の中が闇になってしまうんです」
白い雲が足早に通り過ぎる。蜘蛛の糸のような美しい網目・・・
でもすぐに見えなくなっちゃった・・・
「もし心の中の空を消さずにいられるなら・・・
だれだってきっと幸せでいられるのに・・・
世界だって、もっとよくなるのかなあって・・・
でもムリなんだろうなって・・・」
七草さんが手を伸ばしてきた。
もう一度、僕の手をしっかり握ってくれた。
「あなたのお暇なとき、こうやって一緒にいてくださる。
あなたの詩を聞かせて。知っている好きな詩のこととか・・・」
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