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百メートルくらい離れた場所。高城寺さん、滑り台の柱にもたれる。つまらなそうな顔。
「時間通り来た?」
「一時前に・・・僕ってまちがってた?」
「まちがってないよ。一時に来てと言った。
べつにわたしたちが来るなんて言ってない」
高城寺さん、柱の回りで、つま先ダンス。
「わたし、ボランティア委員会の委員。老人ホームの慰問してるの。
七草さんを公園に連れて行ったとき、君を見かけた。
用事ないし、君とはちがう世界の人間なので話しかけたりしなかった。
でもあのおばあさん。びっくりしたように日下部君を見てる。
日下部君がオレオレ詐欺の手先で、七草さんとこにお金受け取りに行ったのかと思った。
そうだとしたら許さないつもりだった」
あのーー。僕って、「地味」なだけじゃなく、「犯罪者」なの?
一体、どう思われてるんだろう?
百回悪口言われそう・・・
「でもよく見たら、七草さん、顔を真っ赤にして恥ずかしそうな顔。なんだか夢を見ているようなうっとりした表情だった。
変だなって思ったから、
『彼、わたしのクラスメイトです。日下部優馬といいます。
勉強はフツーで運動はあまりできなくて、ぜんぜん目立たなくて、詩を書いてるんですが、だれもそんなこと知りません。
たぶんクラスの半数くらい名前を知らないんじゃないかって・・・
さっすがに、
<君ってクラスまちがえてない。ここ一年一組>
って、言われたことはないみたいです。
でも本当は一度くらいあったかも・・・』
って説明した」
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