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 周防がその招待状を受け取ったのは三日前の放課後、学校でのことだ。 「失礼ですが、周防様ですよね?」  声をかけてきたのは別のクラスの春道さんだった。もちろんメイド姿ではなく、制服姿の。 「そうだけど、どうしたの新芽ちゃん?」 「周防様宛に招待状があります」 「招待状?」 「はい、和泉お嬢様から……。和泉お嬢様のことはご存知ですよね?」  和泉お嬢様。フルネームは和泉(いずみ)(きょう)。お金持ちだともっぱらの噂で、その目立つ言動から学校中に名が知られている同級生の女の子。当然ぼくも名前くらいは知っていた。  ついでに説明すると春道さんは和泉さんのメイドとして働いているとのこと。学校でも常に和泉さんの隣にいるから彼女もそれなりに有名だった。 「知っているよー」  周防が答えると、春道さんはうなずいた。 「お嬢様がご自宅で行うパーティーに周防様をお招きしたいとのことです。これはその招待状です。と言ってもそんな大げさな話しではなく……」 「パーティー? 行く行く!」春道さんの話しを遮って周防が言った。 「それはよかった。お嬢様も喜ばれることでしょう」 「でもひとつ条件があるんだよ」 「……? 何でしょう」 「おっくんも一緒じゃなきゃイヤッ」 「おっくん?」 「えっと、ぼくのことです」ぼくは手を挙げた。ぼくもその場にいたのだ。 「ふむ……。それはお嬢様の考える趣旨から外れてしまうのですが……」 「一緒じゃなかったら行かないよ。おっくんは大切な相棒だからね!」  ごねる周防に春道さんはしばし沈黙したが、やがて「わかりました」とうなずいた。 「お嬢様に相談してみましょう。お嬢様がお許しになるのであれば何も問題はありません」 「やったあ!」フライングして喜ぶ周防。  お嬢様のお許しが出たのかどうかは、ぼくが周防に同伴しているという事実でわかるだろう。  とにかくそんな経緯でぼくと周防は、和泉さんの豪邸に赴くことになったのだった。
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