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「遅れてすみません」玄関前で出迎えてくれた春道さんにぼくは謝った。  じつを言うとぼくたちは指定の時間から1時間も遅刻していたのだ。春道さんの言った「お待ちしておりました」がずしりと重い。 「周防のやつが寝坊しまして……」 「しましてー。てへっ」  茶目っ気たっぷりに言う周防。少しは申し訳なさそうにしろと言いたい。 「構いません。お嬢様のお戯れに付き合ってくださるのです。これくらいのことでは非難しませんよ」そう言って春道さんは玄関のドアを開けた。「どうぞこちらへ。皆さんすでにお集りになっています」  お邪魔します、なんて小さくつぶやいて中に入るといきなり広い空間だった。これがロビーってやつなのか? この時点でぼくの家よりも広い気がする。なんだか本当にすごい場所に来てしまったなという感じだ。 「そういえば疑問なんですけど」春道さんに案内されながらぼくは訊ねた。「これってどういうパーティーなんですか? 趣旨がなんとかって言ってましたけど、招待状には具体的なことは何も書かれてないし、招かれているのは同級生だけだと言うし……。パーティーなんて言うから身構えちゃいましたけど、ホームパーティーみたいなものなんですかね」 「というより単にお嬢様が遊びたいだけですよ、お友達を家に誘ってね。だから、あなたがたもご学友と遊ぶ感覚で参加してくださればいいのです。遊ぶ家や出てくるお菓子がちょっと豪華というだけです」 「なるほど」  ちょっとどころじゃないと思うけれど、それは置いておいて。 「それにしても周防が招かれた理由がよくわからないんですよね」  ぼくはもうひとつ疑問を口にした。  周防は(そしてぼくも)和泉さんと仲がいいわけではない。周防は「鏡ちゃん」なんて馴れ馴れしく呼んでいるが話したことすらないはずだ。そもそも一般市民であるぼくたちの存在を和泉さんが認知しているのか、そこからしてちょっと怪しい。それがどうして招待されることになったんだろう。 「その理由はわたくしからは言えません。それもお嬢様のお戯れのうちに入っていますので」 「はあ」 「お嬢様は皆さんを集めた理由を『じゃーん!』なんて効果音付きで発表なされると思いますが、たぶん事実を知ったらがっかりすると思います。ちなみにですが、お嬢様が発表する前に招待された理由を当てられたら高級プリンを進呈、だそうですよ」 「プリン!?」反応したのは周防だった。 「ええ。今回はプリンを賭けた戦いなのです」 「なんですか、それ……」  尋常ではない悲鳴が豪邸に響いたのは、そのときだった。
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