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005
悲鳴のした部屋に駆けつけるとそこはキッチンだった。まず目に飛び込んで来たのは立ち尽くしている女の子の背中で、耳に飛び込んで来たのは「大丈夫か!」という男の声だった。
「何事です?」と春道さんが訊ねると女の子が振り向いた。学校で見た事のある顔だったが、いまは顔面蒼白で怯えているみたいだ。その女の子が震える手である方向を指差す。
その先を見てぼくはぎょっとした。
和泉さんが倒れている。
きれいな金色の髪を赤く染めて。
「お嬢様!」事態に気づいて春道さんが走り寄る。倒れた和泉さんの両脇には同じく学校で見た事のある男と女の子がいて、男のほうは和泉さんの肩を揺すりながら「大丈夫か!」と声をかけていた。
「いったい何があったのです!?」
「わからない。おれたちがキッチンに来たら倒れていたんだ」
そんなやり取りを聞くなか、ぼくは奇妙なものを発見した。
右腕を伸ばしたままうつ伏せに倒れている和泉さん。血に染まったその右手はピースサインなっており、さらにその近くの床には、「100」という数字が血で書かれていた。
「これは……」
「気がついた?」ぼくのつぶやきに周防が反応した。こんな状況なのに明るい調子で。「血で書かれた『100』という数字とピースサイン。これは鏡ちゃんが残した、ダイイングメッセージだよ!」
和泉さんが目覚めたのは、そのときだった。
人を勝手に殺すんじゃない。
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