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007
ぼくと春道さんは和泉さんを病院へ連れて行くためにキッチンを出た。
玄関に車を呼んであるのでそこまで運べばいいらしい。
そのあいだに予備知識を仕入れておくか。
そう思っていたら春道さんのほうから話しを振ってくれた。
「さきほどプリンを食べた犯人を暴くと周防様はおっしゃっていましたけれど、周防様はそういうことが得意なのですか?」
「得意というかなんというか……。謎を解くのが好きで、そういう事件に出くわすと興奮して解かずにはいられなくなるんですよ。だからぼくも大変なんです。いろんな事件に首を突っ込んではめちゃくちゃにしてしまうので」
「なるほど。少しわかる気がします」
そう言って春道さんは和泉さんの顔を見た。春道さんも相方に振り回されているという点ではぼくと同じで、共感しているのかもしれない。
「だから、周防の話しに付いていけるように事件の周辺についての予備知識がほしいんです。少し質問してもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
ぼくは春道さんにいくつかの質問をした。
その結果わかったのは次のこと。
現在この屋敷にいるのは和泉さんのパーティーに出席している7名のみ。すなわち和泉鏡、春道新芽、ぼくと周防美々、残りはキッチンに駆けつけたときに和泉さんを囲んでいた3人で、名前は持統天奈、猿丸真沙流、赤染木成だ。
プリンは集合時間の前に冷蔵庫にあったのを春道さんが確認しているので、犯行はそれ以後。
警備は厳重だし外部から侵入した人がいたとは思えないから、容疑者はパーティーの出席者と思われる。
ぼくたちが遅刻しているあいだ各自自由行動をしていたので、おそらく全員に犯行が可能。
床にあった数字は筆跡からして間違いなく和泉さんが書いたもの。「あのきれいな『0』とまっすぐな『1』はお嬢様が書いたものです」という解説付き。幼少の頃から和泉さんの文字を見てきたので確実だそうだ。
だけど、なるほど。ぼくはここでひとつの事実を知る。
だからと言ってぼくに犯人がわかるわけではない。
そもそも、ぼくにわかる必要はない。
ぼくは周防に付いていければそれでいい。
ぼくは周防に突いていければそれでいい。
春道さんに質問しているうちに玄関に着いた。外にはすでに和泉さんを病院に運ぶための車が止まっていて、使用人らしき人がふたりぼくたちを待っていた。ぼくは春道さんと協力して車の後部座席に和泉さんを寝かせた。
「それではお嬢様をよろしくお願いします」春道さんは使用人に言った。
「あれ、春道さんは一緒に行かないんですか?」
「わたしまで行ってしまったら、家の者がひとりもいなくなってしまうではありませんか」
「まあ、たしかにそうだけど」
「それに少し興味があるのですよ。周防様の推理とやらに」
「……たぶんがっかりしますよ?」
「大丈夫、戯れには慣れています」春道さんが微笑む。
和泉さんを乗せた車を見送ってから、ぼくたちはキッチンに向かった。
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