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「娘が、お孫さんに『噛みついた』ことは、本当に申し訳ありませんでした。ほら、はる(・・)もきちんと謝りなさい」  そっと、頭を撫でてはる(・・)を促してやる。悔しいだろうけど、頑張れ。 「・・・・・・かみついて、ごめんなさい……」  鬼のような形相をした男児の祖母は、畳みかけるように口汚くはる(・・)を罵る。大人げない。保育士がそっと、はる(・・)と男児を連れだしてくれた。 「娘が『噛みついた』ことは、何度でも謝ります。しかし、ご家庭で我々の事をとやかく言うことは、お止めいただけませんか? 訊くと、お孫さんが娘に何かを言い、それを否定した娘を押したことが、噛んだきっかけだったようです」  できるだけ感情を表さないように、穏やかな口調で話した。しかし―― 「孫に『噛みついた』くせに、そんな生意気な態度で言い返されるとは思わなかったわ!」  男児の祖母は、その後も俺に向かって支離滅裂な言葉を一方的に投げつけ、帰って行った。取り付く島もない。  その後男児の包帯を解くと、歯型が薄っすら残っている程度で大事に至っていなかったことを確認し、俺は心底ホッとした。
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