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制服を発見してから、十五分は経った。
初めこそ、未体験の存在に気圧され肝が冷えた女だったが、気分は和らいでいた。
恐怖が小さくなれば、別の感情が大きくなる。
女は好奇心に負けるがままにベンチから腰を上げた。
無人のホームを女が歩く。足取りは軽いが、早くない。
民家の少ない郊外、辺りで明るいのはこのホームだけ。
しかも青く照らされているのは端の一角のみ。
そこに制服だけの少女が佇んでいる――
はずだった。
三メートルほどまで来た時、どうして服だけ浮いているのかわかった。そのまま歩いて接近する。
電柱の柱に着せられていたのだ。
襟元からスカートの裾まで柱に通され、何かで固定されていた。
”鯉のぼりのようだ”と女は思った。
小一時間自分が眺めていた幻想的な風景が、こんな結果に終わるとは思っていなかった。少々がっかりした後、新たな謎に直面した。
”何で制服が柱に着けられているの?”
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