八話目 「自殺をやめた理由」

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制服を発見してから、十五分は経った。 初めこそ、未体験の存在に気圧され肝が冷えた女だったが、気分は和らいでいた。 恐怖が小さくなれば、別の感情が大きくなる。 女は好奇心に負けるがままにベンチから腰を上げた。 無人のホームを女が歩く。足取りは軽いが、早くない。 民家の少ない郊外、辺りで明るいのはこのホームだけ。 しかも青く照らされているのは端の一角のみ。 そこに制服だけの少女が佇んでいる―― はずだった。 三メートルほどまで来た時、どうして服だけ浮いているのかわかった。そのまま歩いて接近する。 電柱の柱に着せられていたのだ。 襟元からスカートの裾まで柱に通され、何かで固定されていた。 ”鯉のぼりのようだ”と女は思った。 小一時間自分が眺めていた幻想的な風景が、こんな結果に終わるとは思っていなかった。少々がっかりした後、新たな謎に直面した。 ”何で制服が柱に着けられているの?”
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