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緋色の過去「麻衣」 序章
私が同性を好きになったのは中学生の時だった。
その感情を正確に 表現すると「憧れ」「強い憧れ」だったのかもしれない。
いつもその先輩を見つめて、いつも探していた。嬉しく、柔らかな 気持ちになれた・・・。だだ見つめているだけで・・・。
3年生と1年生 接点は無い。
音楽祭の準備の時、体育館で保護者用のパイプ椅子を 並べていた時
椅子の並べ方について注意してくれた先輩・・・。
先輩が卒業するまでの1年間で唯一の会話だった。
椅子を並べ替えて先輩を探した。 そして、私は走った。
「並べ替えました。見て下さい!!!」 そう伝えたくて。
あの日の心の高鳴り、ある種の高揚感は、今でも 忘れられない・・・。
卒業式の在校生の実行委員。簡単に言えば、当日の お手伝い要員。
私はそれに迷わず立候補した。先輩を出来るだけ 傍で送りたかった。
しかし、私に課せられた担当は、駐輪場整理係り・・・。
当日の来賓、 保護者が乗って来る自転車を整理・・・。
もしくは駐輪場への誘導を 行う係り・・・。
その係りを告げられた時、目の前が真っ暗になった記憶がある。
先輩を体育館の中で・・・傍で見ていたかった・・・。
同性に魅かれる。そんな自分の感性疑問を抱き始めたのは
高校に入学してからだった。男女共学の県立進学校。
その生徒総数の約半分は男子。でも、私は男子に惹かれることは
無かった。先輩女子、同級生女子に、私の目と心は注がれた。
高校入学の祝いに両親から買ってもらった。私専用のパソコン。
それで、「私の感性、タイプ」を検索する毎日が始まった。
そして、LGBT、セクシャルマイノリティ、同性愛者等の
ワードに辿り着き、その意味を理解していった。理解が深まると
並行して、私は自身のタイプを否定していった。
「私は・・・違う・・・」「私は・・・普通よ・・・」
あの時は、私の身体と心の中に潜在している「本当の私」を
真上から押さえつけ封印していた気がする。
否定の証として、彼氏を作った事もあった。高校時代に1人
大学一年の時に1人・・・。大学一年の時の彼は、バイト先
の先輩大学生・・・。この彼が初体験の相手であった。
彼とのセックスは、苦痛以外の何物でもなかった。
半年もしないうちに、セックスはおろか、彼の髪の匂い・・・
服の匂い、キスの感触・・・その全てを拒否する自分がいた。
彼を好きになった錯覚をしていた私・・・。
今考えれば、その彼には残酷な事をしてしまったと反省している。
当然、私から別れを切り出して、彼と同じバイトも辞めた・・・。
大学1年の12月であった・・・。
私は、大学進学と同時に上京した。そして、念願の一人暮らし。
飛び上がるほど嬉しかったのは、最初の3日間ぐらいだったと思う。
暗く、狭くて・・・しかも田舎の実家のような畳の無い部屋に帰るのが
淋しくて、淋しくて・・・。ホームシックに陥った。
大学1年から日記を綴ってきた。31歳になった今でも続けている。
約13年間、総数19冊の日記の過去にさかのぼり、私がビアンであると
自覚し、それを受け入れ、そしてビアンであることに幸せを感じる。
そこに至るまでを、赤裸々に小説に記してみたいと考えた。
実名等を除いては、全てはノンフィクション。その日記に装飾も加えず
素のままを読んで頂きたいと思った。
楽しんで頂ければ幸いです・・・麻衣。
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