がくぜんとした夢の果てに

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がくぜんとした夢の果てに

シュタッ…。 夢恋は壁上部に華麗に乗り移る。 …ここに来るのは、これで最後にしないと。 「さてと…」 ピョ…ピョ…ピョーン!! 弾みをつけながら、高く跳ね上がる夢恋。 何度も何度も…前に進みながら、跳ね上がり、下方に注視しながら、長方形アルファベット群を見つけ出す。 …!! あった!! 夢の中での視力2.0が役にたつのかは不明だが、私は遥か前方にそれを見つけた。 シュダダダダダ…! 上部の狭い幅の道を、素早い速度で、軽快に慎重に、駆け抜けていく…! 見つけたら、あとは目指すだけ! シュンシュンシュン…。 右、左とうねる其の道を研ぎ澄まされた集中力で把握しながら、進み行く…。もう、足を踏み外すことはない。足の着地はただ、掠めるだけの走行テクニック。 ……キキキィー! そうこうしてるうちに、目的地へ到着。 ここだけは変更なしのアルファベット密集体。 早く試していこう…。 私は次々と俊敏な動きでアルファベット文字盤を押しこんでいく。 未来への扉を開ける…DOOR 私は孤独の睡夢人…LONELY 地球を救うために…EARTH 失われた夢…LOST 無の境地…SILENT 現実世界の成れの果て…HELL 夢が生まれた日…BIRTHDAY …他多数。 シーン……。 何も起こらない…。間違っているのであろう…。しっかりと点灯確認も上空からしたが、ウンともスンとも変化はない。 もし、正解を押したとしても、私の気づける範囲内で何も変化がないのであれば、それで、終焉…ジ・エンド。 私は最後の望みをかけた一手を繰り出す! バシッ…バシッ…バシッ! これで、終わり…END(終わり) ……………………シーン…。 何も起こることはなく…。。 「そ、そんな…」 悲しげに、愕然と膝をつき、項垂れる夢恋…。 出し尽くすだけ、出し尽くしたが、夢恋のアンサーは無惨に散りいった…。 終わるはずのエンドは…終わらぬエンドレスへと舞い戻る…。 英語は無理だよ…私には無理…だって、スポーツ女子だし、単純なスピード勝負なら良かったな…。。 …とその時、エンドレスの文字が夢恋の脳裏を横切った。 エンド+レス…否定形のレスがいらない。レスの部分だけ非点灯にすれば…。 『エンド・オブ・ザ・ラビリンス』 迷宮の終わり…。 これだ!! 夢恋は再び訪れた奇跡を胸に、軽快に小さき文字盤を巧みに押下してゆく…。 最後の一文字…レス残し!! ……………シーン……。 憐れなる…小さき探求者…無限に挑戦できるわけではない…焦燥感…そして、孤独…。 儚き夢の旅人は、このまま儚き廃人となるべき運命なのだろうか…。 夢恋は泣こうとした…。夢の中では涙は溢せないようだ…。心だけが泣いている…なんだか変な気分だ…。 …皮肉にも第三者のムッシュ…ドリームキング様は何をキーワードにしたの…。 私はムッシュの言葉を思い出してみた…。 日本文化、特にネット掲示板が大好きなドリームキング様…。だったら、アルファベットなんか使わないで、平仮名にしてよ…。 んっ…アルファベットの組み合わせ…ネット造語…絵文字形成…エンドレス以外の単語の頭文字…。 O T L …。 いや、まさか…。そんなことは…。でも、閃いたし、一応試してみよう。 夢恋は一縷の希望にもすがる…。それが、今できることの精一杯…! 夢の世界のど忘れ王様が何を考えてるのかは分からないけど…その時の気まぐれ思いつきで、キーワードを決めたのであれば…。 夢恋は6文字を点灯させた…。 『END OTL(終了…愕然とする姿…私)』 ……ピカァァァァ…ブッシャァァン! …!? いつにも増した閃光が、点灯した壁文字から 天空へと昇っていく!! どんよりした暗雲を突き破るその光のロケット砲は、私の心にも轟いた…。 ポワァァァ…。 迷宮世界が光のヴェールに包まれる…。 「…正解できたの…まさか…。」 突然の演出に驚きながらも、ホッと一安心する夢恋…。 スゥゥゥ…。 天空へと伸びる透明感ある神秘的な階段らしきものが目の前に現れた。。 『MEMORY'S STAIRS(記憶の階段)』 …階段入口を彩るアーチには、そう書いてある。 この階段を上がった先に、夢世界…現実世界 を元に戻すボタンがあるのかな…。 まだまだ、心は休まらない…。 続く階段…ボタンの行方…。 一番上には何があるのか…上りきらなきゃわからない…。 これが、ユニーク演出止まりなら、全く笑えない夢事情…。希望を頼りに、ひたすら進め! 夢恋は、運命の階段にファーストステップを着地させ、一歩ずつ登り進んで行く…。
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