なくのは夢の中だけでいい

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なくのは夢の中だけでいい

私は、階段を一心不乱に登り詰めていく。 記憶の階段…それが意味するのものとは…それはすぐに理解することができた。 階段の一段一段に映り込んでいる夢の物語…。踏み出す度に、その映像は様変わりしていく…。 これは、皆の夢の一部…!?。幸せの記憶…。 悲しみに沈んでいる夫婦の新たな希望… 小さな生命の誕生を抱き合って喜ぶ二人… 両親から間に挟まれ手を繋がれた子供… 可愛いお召し物を着込んだ、七五三… 小学校入学式で泣きわめく女の子… 飼育小屋のウサギを逃がしてしまう… 初めてのテストでの100点… 修学旅行での集合写真… 中学校陸上部での清々しい走る姿… 毎日残さず食べた愛母弁当… クラス皆で一致団結して勝利した体育祭… 笑顔一杯で食卓を囲む家族… 何気ない…いってきます… 眠っている時に見るふわふわした夢とは違う、現実性を帯びた…叶えたい夢…取り戻したい夢…。 「見せる夢」と「望んだ夢」の相互作用。 こ、これは、人生という名の長い旅の記憶なのだろうか…。 はっ…!? 私は気づいた…。顔こそ、モヤがかかり、認識できないものの…。 踏む度に、あらわれるこの映像は…紛れもなく…私自身の楽しかった記憶の思い出たち…。 忘れかけていた記憶が、再び甦ってくる。 私は、泣いていた…。顔がぐしゃぐしゃになりながら…だと思う。だけど、涙は出ない…夢の中だからかな…。 今思うと、私は泣き虫な女の子だった…かもしれない。。夢の中を冒険するたびに、強くなれたような気がする…。 あらためて、夢には感謝したいな…。 ありがとう…。 私は、涙の出ていない目頭を腕で拭いながら、歩を進めていく。 どのぐらい登ったのであろうか…私は頂上へと伸びてるであろう先に違和感を見つけた。 …黒くなっている…。 今から、私はブラックホールにでも突入するかのごとく…。 これからの未来が、悪夢…闇に包まれることを暗示しているのであろうか。 過去の記憶や思い出も全てを闇に葬りさり、黒塗りにでもしてやろうと言わんばかりのそのドス黒さ…。 その黒の塊…物体は徐々に下降してきてるようにも見える…。 うっ…急がなきゃ!! 夢恋は二段跳びのペースで階段を凄まじい勢いで駆け上がる…。 バッシュン…。 黒の狭間に突入すると、世にも恐ろしいうめき声やら悲鳴やらが脳内にずっしりと反響してくる…不快感…この上ない。同時に、異形の黒い影が幾重にも人々を苦しめている映像もフラッシュバックしてくる…。 私はすかさず、アクセル!2倍速のダッシュを敢行する…! 怖いから…ではない。この空間に留まりたくない…。それが夢恋の本音である。 タァァァン…。 頂上…?に着いたようだ。それ以上、登る階段らしきものは無く、視界の先は大広間… そこには、いかにも…今回の凄絶なる騒動を巻き起こしたと思われる…どでかい装置が姿をあらわす…。 あっ…そもそもの原因はコスプレムッシュだけど…。 後戻りなんかできない…する気もないけど…。 後は押すだけ…電源ボタン…。 私は装置に近づいていく…生唾を飲み込み、動悸と呼吸を整えながら…。 ゴドドドド…。 正常な運転ができていないような…エマージェンシー的な挙動で稼働する夢均衡調整発生装置…。(夢恋命名) ウィィィィン…。 なんか、ゲーム機みたいなものが置いてある。装置に繋がってるいるようだけど…。 ドリームキャ◯ト…いや、これはまた駄目。 ドリームステーション…ギリセーフだよね。 その本体ハードに挿入されているカセットソフト…!? ラベルを確認すると、ドリームソフト…。そのままのネーミング…。 リセットボタンを押せば…いや違う、電源ボタン長押しで電源切るんだっけ?確か、黒ムッシュがそう言ってたはずだけど…。 ドックン…ドックン… 緊張のひと押し…! 「これで、最期よ!ジ・エンド!!」 ……………………
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