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ところが。
彼はその日以降、僕の前に全く現れなくなってしまったのだった。
僕は自分の仕事をこなしながら、徐々に不安が満ちてくるのを感じていた。一体何があったのだろう。あんなにも、僕を倒すことに執念を燃やしていた男が。まがりなりにも彼だって神。自分の言葉に乗せた約束を違える程愚かだとは到底思えない。
――何で僕は、あのアホのことをこんなに気にしてるんだ。ほっとけばいいじゃないか。馬鹿は死なないって相場が決まってるんだし。あいつも神様なんだから、滅多なことなんかあるわけないだろ?
いつも完璧に、落ち着いて仕事をこなしていた僕が。最近は些細なミスばかりを繰り返してしまっている。
もうすぐ、彼と出会って九十年。――百年目は、本当に来ないのだろうか。僕はそれで、本当に後悔せずに、自分の世界が最高のものだと信じて構築することができるだろうか。
「くそっ……!」
僕はついに重い腰を上げて、移動雲を動かしていた。彼が支配する、灼熱の世界へと向かうために。
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