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「オヤマダさん、ぼく今日から、タバコやめることにしました!」
ある朝会社に出勤したトラックドライバーのホリ(30歳)は、その職場の先輩で同じくトラックドライバーのオヤマダさん(32歳)にむかって、唐突にたからかな声色で、禁煙宣言をした。
ところがそれを聞いたオヤマダさんは、
「おお、そうか、タバコなんて百害あって一利なしだから、やめて正解だ。がんばれよ」
とこころよく応援してくれるような、できた先輩ではない。
このひとの性格はぐちゃぐちゃに絡まって二度とほどけなくなってしまった釣り糸のように、ねじ曲がっているのだった。
あんのじょうオヤマダさんはポケットからおもむろにタバコを取り出し、火をつけ、吸った煙をいやらしい顔つきでホリの顔にめがけてフーッと吐き出し、
「うんめぇ〜、ホリはこんなうまいもんやめちゃうのかよ、もったいねえなぁ」
などと言い出し、さらには
「っていうか、その歳まで吸ってたら今さら禁煙なんかしても意味ねえし、無駄だからやめろよ!」
とホリの禁煙を妨害しようとしてくるのであった。
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