第3章 超能力トーク(目話)心の葛藤

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第3章 超能力トーク(目話)心の葛藤

洋平は、いつものように学校に行った。 しかしいつものように誰とも口をきくことはなかった。 周囲の友達もそれが当たり前と思っていた。 いつものように社会の授業を受けているとき、ふとあの不思議な夢を思い出しまた試してみようという気がしてきた。 先生の瞼(まぶた)を観察ーーー。 右6回、左2回、両方3回、右7回、左5回。 「洋平君はいつになったら、まともに口きけるようになるのだろう? もう少し一生懸命勉強してくれると助かるのだけど・・・。」 ああああああーーーどうしよう? 先生が考えている事が言葉として聞こえた!!! 友達はどうだろうか?左となりの直樹は? 左瞼7回、右瞼4回、両方2回、右10回、左6回。 「こいつ声でないふりして、いい加減にしろよ!皆お前の事どれだけ心配しているか!」 結構直樹もいいやつだったんだ。 ああああああーーーだめだ、だめだ、だめだ。 瞼(まぶた)の動きですべての人の心がわかっちゃう!どうしよう!!! 怖い!怖い!怖い!こんな世界いやだ!!! 益々自分がいやになってきた。 もうやめよう、こんなこといやだ。人間ではなくなってしまう。 表情や行動で心を察するから「思いやり」や「やさしさ」といった人間らしい気持ちが生まれる。 それがすべてわかってしまうと、人間らしさがなくなってしまう。 もうやめよう。たとえ自分が超能力を持っていようと、口がきけなくても人間らしく生きたい・・・。 洋平は自分のこの超能力を人に使うのをこの日からやめた。
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