第7章 超能力トーク(目話)動物と人間の通訳業の門出

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第7章 超能力トーク(目話)動物と人間の通訳業の門出

そしてそれから2週間後。初めての依頼が入った。 それはサーカス団からの依頼だった。トラの猛獣使いが、最近トラがいう事を聞かなくなって困っているというものだった。 サーカス団に訪問して檻の中のトラの前まで行き、早速「目話」をしてみた。 右瞼5回、左瞼10回、両瞼13回。「君はどうしてご主人様の言う事を聞かないんだい?」 するとトラが瞼を動かしだした。右瞼3回、左瞼6回、両瞼18回。「最近ご主人様はショーの事ばかり考えている。以前は僕にとても優しかった。そして誰よりも僕を愛してくれた。そんなご主人様が僕はとても好きだった。でも今は違う。だから言う事を聞きたくない。」なるほど。 洋平はトラの猛獣使いに言った。「このトラ君は、ご主人に愛されたい」と言っています。「最近はショーの事ばかりで、僕の事を以前のように愛してくれないだから言う事も聞きたくない」と言っています。 するとトラの猛獣使いは目にあふれんばかりの涙があふれた。そして「ジョン!ごめん」と言って檻の中に入っていった。このトラの名前はジョンというらしい。ジョンはジャングルではぐれて、怪我をしているところを人に見付けられて保護された。そして懸命に介護したのがこのサーカス団の猛獣使いだった。 その頃は目に入れてもいたくないほどこのジョンをかわいがった。しかし最近はショービジネスに入れ込んで、お金儲けの事ばかりを考えていた。そして猛獣使いはジョンの頭をなでながら「ジョンごめん」と何度も言っていた。ジョンは久しぶりに猛獣使いの顔をぺろぺろとなめていた。 そして洋平に向かって左瞼を6回パタパタと。「ありがとう!」と声が聞こえた。 洋平の最初の仕事は無事終わった。初めて自分が人さまや動物のお役にたてた事で洋平は感無量の思いで、帰宅の途につくのであった。
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