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殺気がない。つまり私を殺そうともしていない。
というか、私を退かせたい割に敵意すら薄い。
更には、その隠された目からはただ悲しみしか宿っていない。
桃香「ねぇ…?貴方、なんで戦ってるの?」
だから、私には疑問しかなかった。
徐庶「……俺は、曹操軍の人間だ。だからここに居るんだ…」
桃香「ふぅん…?んで?敵を前にして殺意も敵意もないのはなんで?」
徐庶「…………」
何も答えたくないってか。
別にいいけどさ…
桃香「貴方は、士元さんの思惑を見破ったんだよね?なのに、曹操にも言わず黙って見過ごしてる。それってなんで?」
徐庶「……君に話す理由があるのかい?」
桃香「ないね、敵だし。ただ、なんか貴方と戦ってると……スゴくイライラしてきてさ」
敵であれ、味方であれ、みんな主君の為に命を賭してこの戦場に立っている。
私だってそうだ。全ては義父、劉玄徳の為に戦っている。
なのに、この人にはそれを感じない。
ただ何となく居る…そんな感じだった。
徐庶「…………」
桃香「敵意も殺意もなく、悲しむだけ。そんなに戦に出たくないなら、出なきゃよかったじゃない。しかも敵の策を見逃してるとか、意味分かんないんだけど」
徐庶「…収集には逆らえない。曹操軍の一員である以上、出なければならないんだ。曹操には、本心から仕えてる訳じゃない。だから言わないだけだよ…」
桃香「じゃあなんで曹操に付き従ってるのさ?仕えたくないんなら、離れればいいでしょ?」
徐庶「…………母上の為に、従わざるを得なかった。俺には母上を見捨てることなんて、どうしてもできなかったんだ…」
その言葉を聞いて、私の苛立ちは頂点に達した。
桃香「……お母さんの為に、ね…。その為に自分の全てを犠牲にして、悔いる道を選んだと…。ふざけるのも大概にしなさいよ?」
徐庶「君に何が分かるっていうんだい?……何も知らないだろう」
桃香「知りたくもないよ!何がお母さんの為によ!自分の人生すらマトモに歩めない人のクセに!」
徐庶「なっ…?!うわっ?!?!」
私は槍を力の限り振った。
さすがに力が入っていた為に元直さんは後ろへ吹き飛ばされた。
私がこんなに怒りを感じたのは、初めてだった。
……この人はほんの少しだけ、私と似た境遇を持った人だ。
だからこそ……腹が立って仕方ない。
母親の気持ちを考えてない、この男に…ものすごく怒りを感じた。
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