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私達は、今居るこの世界を飛び出して新しい世界で暮らそうと計画していた。
この世界にいる限り、同族の追っ手から逃げられないから。
人間世界と闇の世界の狭間に、異界の門がある。
そこは、鬼でさえ通ることを拒む程に危険な門。私達はその門を通って脱出を図ろうとしたけど…
「ちっ!!追っ手が来た!桃香、急げ!」
「分かってる!」
鬼達がそう易々と逃がそうとしてくれる筈もなく、私達は四面楚歌だった。
「一族の恥晒しの忌み子め……。ここで滅してくれるわ!!」
「誰があんた達なんかにっ!!」
私は鬼の姿になり、必死で応戦する。
けれど、私の力は…純血の鬼とは違い非常に弱かった。
あともう少しで門に辿り着くのに…!
「桃香!ここは私が食い止める!お前は早く門を開けて行け!」
「母さん!?」
「私と違い、人間の血を引くお前ならば…どの世界でも生きていける!早く行け!」
「嫌だ!母さんも……」
「……最後くらい、母として子を守る責任くらい…果たさせなさい。どの道私は酷い手傷を負ってしまった……。お前だけでも逃げろ」
「母さ……」
「早く行け!」
母さんの強烈な睨みに、私は涙を溜める。
そして、私は全力で走り出した。
「鬼ではなく…人として生きてくれ…!お前な、ら……出来るから……」
最後に聞こえたその囁きは、母の断末魔と共に消え去った…
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